「コンビニには行けるのに、なんで働けないの?」
「ただの甘えじゃないの?」

そんな周囲の言葉に、胸を痛めてはいませんか?

実は、ひきこもり状態にある方の約7割は、コンビニやスーパーへの外出はできているというデータがあります。
物理的な「家のドア」は開くのに、なぜか「社会」へと続くドアだけが、びくともしない。
その苦しさは、決してあなたの「甘え」や「怠け」のせいではありません。

この記事では、あなたの目の前に立ちはだかる「高くて低い壁」の正体を、少し違った視点から解き明かします。
そして、無理に頑張らなくても、あなたのペースでその壁を越えていくための「小さな鍵」の見つけ方をお伝えします。

私たちカフェベルガは、長年、動きたくても動けない多くの仲間に寄り添ってきました。
この記事を読めば、「なんだ、自分のせいじゃなかったんだ」と心が軽くなり、自分らしい一歩を踏み出す勇気が、じんわりと湧いてくるはずです。

ベルガーくん
ベルガーくん

吉田さん、家のドアは開くのに、社会へのドアが開かないって、なんだか不思議だし、つらいですよね…。

そうね。でもねベルガーくん、そのドアの鍵は、焦らずゆっくり探せば、必ず見つかるものなのよ。

吉田代表
吉田代表

「コンビニには行けるのに…」不思議な壁の正体

さきほどお話ししたように、「ひきこもり」といっても、部屋から一歩も出られないわけではありません。
多くの人が、人目を避けて外出することはできています。

「夜中のコンビニなら買い物に行ける」
「家族とは普通に話ができる」

そんな方も多いのではないでしょうか。

物理的な「家のドア」には、鍵なんてかかっていません。
開けようと思えば、すぐに開けられるドアです。
それなのに、なぜ「社会」へつながるドアは、こんなにも重く閉ざされているように感じるのでしょうか。

それは、皆さんの前にある壁が、目に見える壁ではないからです。
その壁の正体は、「人の目」「関係性」への恐怖です。

  • 「今の自分を誰かに見られたくない」
  • 「また失敗して傷つくのが怖い」

そんな気持ちが、エベレストよりも高い壁となって、あなたの前に立ちはだかっているのです。
この壁は、決してあなたが弱いから存在するわけではありません。
むしろ、あなたがこれまで社会の中で傷つき、自分を守ろうとして必死に築き上げた「防壁」なのかもしれません。

人目を避けて外出するひきこもりの人

あなたが動けない理由。それは「怠け」ではありません

「外に出なきゃいけないのは分かっている」
「でも、体が鉛のように重くて動かない」

そんな自分を、「自分は怠け者だ」「ダメな人間だ」と責めていませんか?
実はその「動けなさ」には、脳の仕組みが関係していることがあります。

自閉スペクトラム症などの特性を持つ人に多い、「自閉的慣性(Autistic Inertia)」という現象をご存じでしょうか。
これは、「止まっているものは止まり続けようとする」という物理の法則に似ています。
一度止まってしまった状態から動き出すには、ロケットを発射するような莫大なエネルギーが必要なのです。
気持ちの問題ではなく、脳の切り替えスイッチが入りにくい状態なんですね。

体が鉛のように重くて動かないひきこもりの人

また、光や音、人の気配に敏感な「感覚過敏」がある場合、外の世界は刺激が強すぎます。
街の人々にとっては普通の光景でも、当事者の方にとっては「砲弾が飛び交う戦場」のように感じられることもあります。
そんな危険な場所に、鎧も着ずに飛び出していくのは誰だって怖いものです。

だから、動けないのはあなたの「甘え」ではありません。
あなたは今、目に見えない重力や恐怖と、必死に戦っている最中なのです。

動き出すための「小さな鍵」の見つけ方

では、どうすればその高くて低い壁を乗り越えられるのでしょうか。
大切なのは、いきなり壁の向こう側(就労)を目指さないことです。
壁に小さな穴を開けるような、「スモールステップ」から始めてみましょう。

  • ステップ1:家の中で「安心」をチャージする
    まずは、家の中を安全な場所にしましょう。
    家族と「おはよう」と挨拶したり、洗濯物をたたんだりするだけでも立派な役割です。
    「ここにいてもいいんだ」と思えることが、心のエネルギーになります。
  • ステップ2:誰にも会わない外出をする
    エネルギーが少し溜まったら、物理的に外に出る練習をします。
    誰もいない夜の公園を散歩する、図書館で本を借りるなど、人と話さなくていい外出で十分です。
  • ステップ3:安心できる「場」とつながる
    ここで初めて、少しだけ他者と接点を持ってみます。
    でも、いきなり濃い人間関係は疲れてしまいますよね。
    「ただそこにいるだけでいい場所」「誰もあなたを攻撃しない場所」を見つけることが大切です。

変化のきっかけは、劇的な出来事でなくても構いません。
「今の生活にちょっと飽きたな」「なんとなく外の空気が吸いたいな」
そんな些細な「飽き」や「気まぐれ」も、壁の鍵を開ける立派なきっかけになります。

扉の外の空気に触れるひきこもりの人

カフェベルガは、あなたの「安心基地」になりたい

もし、ステップ3の「安心できる場」を探しているなら、私たちカフェベルガを思い出してください。

「カフェベルガって、就職するための場所でしょ? まだ働くなんて考えられないよ」
そう思う方もいるかもしれません。

でも、安心してください。
カフェベルガには、「就労移行支援」だけでなく、「自立訓練(生活訓練)」という、まずは生活の基盤を整えるためのコースも用意されています。

「まずは、朝決まった時間に起きられるようになりたい」
「家以外の場所で、リラックスして過ごしてみたい」

そんな方は、自立訓練から、非常にゆっくりとしたペースでスタートできます。
そこでエネルギーを蓄え、「そろそろ働くことを考えてみようかな」と思えるようになったら、就労移行支援へとステップアップすることもできるのです。

私たちは、皆さんに「安心」と「場」を提供することを何より大切にしています。
「それぞれの一歩」は、人によって違います。
カフェベルガでは、就職までに3ヶ月の人もいれば、自立訓練から始めて3年以上かけてゆっくり準備する人もいます。
そのどちらも、素晴らしい「一歩」なんです。

「今日は天気がいいから、ちょっと見学に行ってみようかな」
「スタッフの顔だけ見て帰ろうかな」
そんな軽い気持ちで大丈夫です。
カフェベルガには、同じような悩みを抱えながら、それぞれのペースで過ごしている仲間がいます。

私たちは、無理にあなたを引っ張り出すことはしません。
あなたが「一歩踏み出してみようかな」と思えるその時まで、いつまでも待っています。

まとめ:人生を諦めなくて良い理由

「もう何年もひきこもっているから、手遅れだ」
そんなふうに諦める必要はありません。

23年間のひきこもり生活を経て、社会復帰した方もいます
50代から新しい生活を始めた方もいます

長い空白の期間は、決して無駄ではありません。
その間に考え抜いたこと、感じた痛みは、きっといつかあなたの深みとなり、誰かの痛みに寄り添える優しさになります。

あなたの目の前にある壁は、確かに高いかもしれません。
でも、それは絶対に崩れない壁ではありません。
そこには必ず、外の世界へと続く「扉」があります。
その扉の鍵は、焦らずゆっくり探していけばいいのです。

あなたのペースで、あなたらしい一歩を。
私たちは、その一歩を心から応援しています。

Published on Dec 19, 2025 | Written by つくば市 就労移行支援 自立訓練 カフェベルガ