「カフェベルガ訓練生が、「私たち」についてつづるコラムです。」
発達障害、という言葉が、メディアやインターネットで流れるようになってずいぶん経ちます。これまで一度も目にされたことがない方は少ないことでしょう。
それがある特定の人たちに結びつけられる言葉であることは、皆さんご存じかとは思います。でも、それが「どういうことか」というのは、あんまり知られていないのではないでしょうか?
よく言われているのは、
人の気持ちがわからないらしい。
空気が読めないらしい。
コミュニケーションが取れないらしい。
……なんだかUMAみたいですね。雪男とか。
なんだかデカいらしい。
毛が生えてるらしい。
こういうことはみんな知っていても、それが「どういうことか」――つまり
デカいと言っても、電柱くらいなのか、ビルくらいなのか、はたまた頑張れば人間と言い張れる大きさなのか。
生えている毛はゴワゴワなのか、もふもふなのか、色は、長さは。
それに答えられる人、あんまりいないですよね。なにせ誰も見たことないですし(僕見たよ! という方いたらごめんなさい)。
テレビでは時々見るんですけどね。――そう、雪男と発達障害の人たちにはもう一つの共通点があります。
テレビやネットでは、実際に見てきた人たちや有名な当事者の限りあるケースばかりが共有され、「ステレオタイプ」のイメージ一色になりやすい、ということです。
ためしに、「日本人」ってどんなイメージだか、思いつくだけ挙げてみてください。
まじめで勤勉?
細かいものを作るのが得意?
体面を大事にする?
礼儀正しい?
先祖を大事にする?
ちょっと古いかもしれませんけど、こんな感じですよね。
では……、「関西人」「九州男児」と言われたとき、どんな人をイメージしますか? 「日本人」のイメージとはだいぶかけ離れたものが浮かんだのではないでしょうか。
「関西人」だっていろいろ別れてます。京都人だからお笑い好き、とはあんまり言わないですよね。
でも、関西人や九州男児が日本人じゃないなんてことはありません。「日本人」という大まかなくくりじゃ全員が必ず当てはまるわけではないというだけの話です。
それと同じように、発達障害の人の中にも、世の中で知られた特徴が当てはまらない人はとてもたくさんいます。
自分の世界に閉じこもって、人と話したがらない。
……話すのが好きな人もいます。
図鑑や数字が好き。
……物語やことばにこだわる人もいます。
好きなことに集中すると周りが見えなくなる。同じ作業が得意。
……十五分おきに別の作業をした方が効率がいい人も。
記憶力がすごい。天才。
……多くの人は、特殊な才能なんて持っていません。
発達障害を持つ人には、一人として同じ特徴を備える人はいないとまで言われます。
でも、日本人で言うところの、髪や目が黒い、という程度の「共通点」はあります。それがある人が発達障害と診断されます。
そして、日本人の血液型にはA型が多い、と言われるのと同じように、外見からはわからない傾向も存在します。
生まれつき他の人とは何かが違う。
一見どこも悪くないのに、いろんなことがうまくできない。
悪気があるのではなく、自分でもコントロールが難しい。
障害だから、病気とは違って治らない。
でも、成長しないわけではない。
もし発達障害に生まれついても、周囲の関わり方によっては幸せをつかむこともできる。
……あなたが突然外国に引っ越したといたら、その国の人はどんな人だろう、と知ろうとしませんか? 好奇心からでも、それからの自分の生活を楽にするためでも。
そんなとき、隣に住んでるお姉さんの好みとか探るのは一つの手ですよね。
そのほかにも、新しく好きになったアーティストがいるとき、メンバーやスタッフ、ファンにどんな人がいるか調べませんか? 新しい学校に通うことになったとき、そこの先生のつぶやきを見つけたら読んでみませんか。
私は発達障害です。話すことが好きで、図鑑も科学も好きですが、数字よりは言葉や物語にずっと魅力を感じます。
読んだり聞いたりしたことや昔のことは結構覚えていますが、それを売りに食べていけるほどではありません。
私は竹やぶに建つ不思議な屋敷の住人です。ここにはいろんな人が住んでいて、それぞれまったく違う特徴を持っています。
このコラムでは、そんな彼らのことをご紹介します。
興味を持っていただけたら、とても嬉しいです。